海洋ごみの発生源

海洋マイクロプラスチックとは?その発生源は?

51兆個の マイクロプラスチック

上の写真をみてください.1セントのコインの上にプラスチックのかけらがのっています.コインの直径は1.9 cmです.

この小さなプラスチックのかけらは,マイクロプラスチックと呼ばれ,大きさが5 mmより小さなプラスチック片と定義されます(Barnes et al. 2009).

今日,51兆個のマイクロプラスチックが世界中の海を漂っています(van Sebille et al. 2015).その数は,銀河系の星の数の500倍あります(UNEP Newscentre Feb 23 2017).

この小さなプラスチックが海で発見されたのは1970年代ですが,「マイクロプラスチック」という言葉がよく使われるようになったのは2004年のサイエンス誌に「Lost at Sea: Where Is All the Plastic?」というタイトルの論文がでてからです(Thompson et al. 2004).

  • Q
  • A

Question

マイクロプラスチックの定義はなんですか?

Answer

一般的には,大きさが5 mm以下のプラスチックとして定義されます(Barnes et al. 2009).マイクロプラスチックを 2 mm以下として扱う研究もあれば(Hammer et al. 2012),1mm以下とする研究もあります(GESAMP 2015).とはいえ,5 mm以下をマイクロプラスチックとする研究が多いです.

マイクロプラスチックはどこから発生するのでしょうか?

マイクロプラスチックは,その起源から大きく2つのグループに別けられます(Arthur et al. 2009).

1つは,製造された時点ですでに5 mm以下の小さなプラスチックで,1次マイクロプラスチックと呼ばれます.

もう1つは,プラスチック製品が劣化して小さくバラバラになったもので,2次マイクロプラスチックと呼ばれます(GESAMP 2015, Thompson 2015, RIVM 2014).

あなたも使ったことのあるマイクロビーズ

1次マイクロプラスチックには,ケア商品に含まれるマイクロビーズがあります.洗顔料や歯磨き粉,ボディシャンプーなどのケア商品には,角質や汚れを落とすために,プラスチック製のマイクロビーズやマイクロカプセルがよく使われます(Fendall & Sewell 2009, Rochman et al. 2015, Leslie 2015).

私たちがマイクロビーズの入ったケア商品を使うと,それは排水溝を流れ,一部が下水処理場をすり抜けて海に入り込みます.

米国では,排水溝を流れるポリエチレン製のマイクロビーズの量は,年間で263トンにも及んでいました(Napper et al. 2015).

マイクロビーズをほぼ食い止められる立派な下水処理施設をもった国はごく僅かで,多くの国ではマイクロビーズがじゃんじゃんと処理場を抜け出して海洋に流れています(Hammer et al. 2012, Duis & Coors 2016).

他には,プラスチックの塗料やサンドブラスト(粒子を吹き付けて表面を加工する方法)にもマイクロビーズが利用され,1次マイクロプラスチックの発生源となります(Sundt et al. 2014).

丸くてカラフルな樹脂ペレット

身近にある浜辺に目を向けてください.大量のプラごみの破片の中に,見た目には,まるっこいかわいらしいプラごみが落ちています.これは樹脂ペレット(レジンペレット)といいます.

樹脂ペレットとは,プラスチック製品を成型・加工する際に使う中間原料で,大きさが2-6 mm程度と,比較的大きな1次マイクロプラスチックです(Browne et al. 2011).

ものすごい数の樹脂ペレットがプラ製品の製造に使われています.たとえば,ポリバケツの原料になる高密度ポリエチレンを,たったの227グラム(ハーフポンド)作るのに,2万2千個のペレットを使います(USEPA 1992).

アメリカではおよそ270億キログラムの樹脂ペレットが毎年生産されています(Elias 2017).

マイクロプラスチック

樹脂ペレットの一部はプラスチック製品の製造や輸送中にこぼれ,漏れ出し,雨風に飛ばされ流され,最後は海にたどり着きます.

樹脂ペレットは,世界中の海や浜辺で見つかっています.ニュージーランドの,ある浜辺では,海岸に沿って1mおきに10万個以上の樹脂ペレットが見つかったと報告されています(Gregory 1977).

工場でプラスチックを削ったり加工したりする時にでてくるクズも1次マイクロプラスチックの発生源です.こういったものが不適切に管理されて環境中に漏れ出します.

もっと多い2次マイクロプラスチック

しかし,海洋でもっと多いマイクロプラスチックは,プラスチックが風化(ふうか)することで発生する2次マイクロプラスチックです(Barnes et al. 2009).

海を漂流するプラスチックごみの多くは,長い間,太陽の紫外線にあたり,高温にさらされ,光分解と熱酸化分解によって少しずつ劣化して脆くなります(Andrady 2017).やがて小さくバラバラになります.

さらにプラチック同士がぶつかったり,波の作用や岩・砂にすり減らされたりと,物理的な摩耗によって削られて小さくなっていきます.

海のうえを浮かぶプラスチックは,水の表面から顔をだしている部分のほうが,太陽光と熱にさらされるので,水に浸かっている裏面よりも劣化が速く進みます(Halle et al. 2016).しかし,深い海まで沈み,光の届かない冷たい深海底に横たわるプラスチックごみの劣化はほとんど進みません(Muthukumar et al. 2011).

また一般的に,浜辺に打ち上がっているプラスチックごみの方が,海を漂流するプラスチックよりも速く劣化してマイクロプラスチックになります(Andrady 2011).なぜなら,浜辺は水中よりも温度が高くなるからです.

さらに水の中では,プラスチックの表面に様々な生き物(藻類やフジツボなど)が付着するので,それらが紫外線の透過を妨げるため劣化が遅れます(Weinstein et al. 2016).一方,浜辺では表面に付着物がつかないため,もろに紫外線を浴びて速く劣化が進みます.

そのような視点からみると,浜辺に落ちているプラスチックごみを拾うことは,急速にマイクロプラスチックになってしまうことを予防する点で意味があります.マイクロプラスチックになってから回収するのは不可能です.

陸上でも発生する2次マイクロプラスチック

2次マイクロプラスチックは陸上でも発生します.たとえば,農業に使われる野菜の根っこを覆うプラスチックのシートは,長時間,大陽光にさらされ,ボロボロに劣化します.

こうして発生したマイクロプラスチックは,風に飛ばされ,雨に流され,海に入ります(Kyrikou & Briassoulis 2007).

道路を走る車のタイヤから発生するカスもまた,合成ポリマーとしてマイクロプラスチックになりえます(UNEP & GRID-Arendal 2016).このタイヤからでるカスは,海洋プラスチックごみの18%にも相当するという報告もあります(Green Alliance).

あなたも出しているマイクロプラスチックファイバー

海上で捨てられたプラスチック製の釣り糸や漁網・ロープなどは,劣化して微細化すると,繊維状のマイクロプラスチックとなり,マイクロプラスチックファイバーと呼ばれます.これも2次マイクロプラスチックです.

マイクロプラスチックファイバーは,服を洗濯するときにも発生します(Fendall & Sewell 2009, Browne et al. 2011).フリースなどの化学繊維の服を洗濯・乾燥した際に,大量の繊維クズ(ファイバー)が発生し,これが風に飛ばされる,排水溝を流れるなどして,海に入りこみます.

パリでは,大気中のクズのうち33%が化学繊維だったそうで,これは2500平方キロメートルあたりに換算すると3〜10トン(!)の化学繊維に相当します(Dris et al. 2017).

米国では8割の世帯が衣類乾燥機を使用しており,排気される空気から大量のマイクロプラスチックファイバーが放出され,水道水に混入する原因にもなっています(Tyree & Morrison).

洗濯からでる化学繊維クズは,1次プラスチックのマイクロビーズと同じ経路で海にやってくるため,1次マイクロプラスチックとして扱うべきだという声があります(Sundt et al. 2014).

除去できないマイクロプラスチック

マイクロプラスチックは,海流にのって,世界中の海を駆け巡ります.浅い海から,深い海の海底,あるいは北極の氷の中,都市から最も離れた太平洋の無人島の浜辺など,海のありとあらゆる所で見つかります(Andrady 2017).

もはや海水があるところにはマイクロプラスチックがある状態です.

いったん海の中に入ったマイクロプラスチックを除去する方法はありません.マイクロプラスチックは,大きなプラスチックごみと違って,お金をかければ回収できるという代物ではありません.

1次マイクロプラスチックに関しては,その生産量や発生源を特定することが出来るため,その利用を制限する動きが始まっています(GESAMP 2015).

しかし,もっとずっと多い2次マイクロプラスチックについては,どこでどのくらい発生しているか調べようがなく,いまのところ為す術がありません(Andrady 2017).

Acknowledgements: The author thanks Audubon Community Nature Center for permission to use copyrighted image.

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