あなたの吸っているタバコはプラスチックです

海洋プラスチックごみ

タバコの吸い殻は,世界中の浜辺で最もよく見られる海洋ごみの1つです(Ocean Conservancy 2010).

2009年に世界108カ国・地域で行われた国際沿岸クリーンアップでは,世界中の浜辺から約220万本のタバコの吸い殻が回収されました(Ocean Conservancy 2010).

2002年の時点で,5兆6000億本のタバコのフィルターが世界中で消費され,この数は2025年には9兆本になると推定されています(Novotny et al. 2009).そして毎年70万トン以上のタバコ吸い殻が世界中で捨てられています(Carlozo 2008).

タバコの毒が海洋生物を殺す

タバコが健康に良くないことは周知の事実ですが,タバコが海の健康を害しているかどうかまで知る人は少ないでしょう.

タバコには,タバコの栽培から製造の過程で非常にたくさんの化学物質が使われており,その残渣が製品の中に紛れ込んでいます(Hoffmann & Hoffmann 2010).たとえば,殺虫剤,除草剤,防カビ剤,殺鼠剤などです(Glantz et al. 1996).

加えて,4000種以上の化学物質がタバコの灰や煙からでてきますが,そのうち50種類以上は発がん性が知られています(Hoffmann & Hoffmann 2010).ヒ素,ニコチン,多環式芳香族炭化水素,重金属といったものも,ポイ捨てされたタバコから環境中に流れでます(Moriwaki et al. 2009).

海洋プラスチックごみ

いったん水の中に入れば,淡水または海水中に様々な有害物質を放出します.1本の吸い殻を1リットルの水にいれると,それは海洋および淡水の生物を殺すには十分な量です(Micevska et al. 2006, Slaughter et al. 2011).

たとえば,ある種の海水魚(トウゴロウイワシ目)と淡水魚(コイ目)を用いた実験では,水1リットルあたりにタバコの吸い殻1本で半数致死濃度(*)になることが報告されています(Slaughter et al. 2011).
*実験に用いた魚類の半数が48時間以内に死亡する濃度

さらにタバコを吸った後のフィルターだけでも,タバコ2本〜4本分の量(1リットルあたり)で半数致死濃度に達します(Slaughter et al. 2011).

ただし実際には,タバコが海に入っても大量の水ですぐに希釈されてしまうため,どの程度まで化学物質の影響があるかはよくわかっていません.

タバコのフィルターはプラスチック

タバコのフィルターは,セルロースアセテート(アセチルセルロース)という合成ポリマーでできています(Novotny et al. 2009).1種のプラスチックです.セルロースアセテートは,メガネやサングラスのふちの材料としてもよく使われています.

原料となるセルロースそのものは容易に自然分解しますが,セルロースの酢酸エステルであるセルロースアセテートは,安定しており長期間分解されません.

短い波長の紫外線(280ナノメートル)を当てると光分解が進みますが,太陽光ではほとんど分解が進みません(Puls et al. 2010).生物に分解されるためには最初にエステラーゼという酵素が必要になりますが,自然界で生物に分解されることはほとんどありません(Novotny et al. 2009).

したがって,ポイ捨てされ海に入りこんだタバコのフィルターは,長い年月(おそらく何百年単位)分解されることなく,環境中に残り続けます.

有害物質を含むフィルターが,マイクロプラスチック(マイクロプラスチックファイバー)となって,海洋の動物に誤食され,食物網に取り込まれる可能性も指摘されています(Cole 2016).

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