海洋ごみの脅威

動物プランクトン

マイクロプラスチックを誤食する小さな巨人−動物プランクトン

私が何を食べているかわかりますか?

イギリスのプリマス海洋研究所は,動物プランクトンが,マイクロプラスチックを餌と間違えて食べている映像を公開しました.

歯磨き粉や洗顔料などに含まれるプラスチックでできたマイクロビーズが海洋の小さな生物に与える影響はまだよくわかっていません.

しかし,この映像を見る限り,動物プランクトンはマイクロビーズを餌の植物プランクトンと間違えて食べていることがわかります.

これまでにいくつかの研究によって,ろ過食性の動物プランクトンが,小さなマイクロプラスチックを誤食(誤飲)していることが実験的に証明されています(Cole et a. 2013, Setälä et al. 2014).動物プランクトンは,食物網の底辺を支える,非常に重要な動物群です.

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Question

マイクロプラスチックとはなんですか?

Answer

マイクロプラスチックとは,大きさが5 mmよりも小さなプラスチックのかけらや粒のことで,劣化したプラスチックごみが粉々になったものや,洗顔料などのパーソナルケア商品に含まれるマイクロビーズなどが該当します.マイクロビーズは,排水溝を流れたあとに,下水処理場をすり抜けて海洋に流れ込んでいます.

動物プランクトンの生存戦略を狂わせる

動物プランクトンはたいてい数時間以内にプラスチックを体から排出しますが,食べたマイクロプラスチック(ポリスチレン粒子)を数日間も体内に保持したままの個体もいました(Cole et a. 2013).

動物プランクトンは,マイクロプラスチックを食べることで,本来食べるべき栄養のある食物を食べられなくなり,栄養の摂取を著しく下げてしまいます.結果的に,卵を産んで子孫を残す能力(再生産)も下がってしまいます(Cole et al. 2015, Lee et al. 2013).

しかも,まったくもって栄養のないマイクロプラスチックは,動物プランクトンが餌不足に直面したときの戦略までも狂わせてしまいます.

動物プランクトンは,通常自分たちの餌が少なくなってくると,自ら代謝を下げて,消費するエネルギーを減らそうとします.しかし,マイクロプラスチックを餌だと勘違いした動物プランクトンは,本来食べる餌が少ない状態でも,代謝を下げないことがあるといいます(Cole et al. 2015).

自然界でも実際に食べていたプラスチック

実際に自然界でも動物プランクトンがプラスチックを食べていたことが,カナダの研究チームの調査からわかりました(Desforges et al. 2015).予想されていたとは言え,やはり衝撃であり,海洋の健康にとって悪いニュースです.

カナダの研究チームは,北東太平洋で優占する2つの動物プランクトン,カイアシ類(Neocalanus cristatus)とオキアミ類(Euphausia pacifica)を捕まえて胃の中を調べたところ, 34匹のカイアシ類につきマイクロプラスチック1粒子,そして17匹のオキアミ類につきマイクロプラスチック1粒子が発見されました(Desforges et al. 2015).

カイアシ類は,体長が2-3mmほどの小さな甲殻類ですが,その生物量は世界で最も大きいと考えられており,小さな巨人とも言われます.オキアミ類もまた,1種だけで最大の生物量を誇る種類も含んでいます.

これらの小さな巨人を含む動物プランクトンは,食物網の底辺を支える非常に重要な動物群です.もし動物プランクトンがプラスチックの影響でその数を減らすようなことがあれば,動物プランクトンを食べている魚類や鯨類にも影響を及ぼすことになります.

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