2050年にプラスチックが魚の量を超えます

マイクロプラスチック問題-人体に影響はないの?

生牡蠣の皿

もしあなたが魚介類(シーフード)あるいは海塩を食べているのなら,あるいは飲料水を飲んでいるなら,いくらかのプラスチックを摂取している可能性は大いにあります(EFSA CONTAM Panel 2016, The Gardian 2017).

人体への影響はまだ不明

マイクロプラスチックが人間に及ぼす影響を調べるのは容易なことではありません.

なぜなら,マイクロプラスチックは私たちが飲む水にも空気中にも(化学繊維がチリとなって舞っている),食べ物にも混じっているからです.

人間への影響を厳密に評価するにはマイクロプラスチックに曝露されていない人間と比較する必要がありますが,それが難しいのです.

プラスチックが混入した魚介類は体に悪いのでしょうか?実はまだよく分かっていません.

プラスチックが体に良い物ではないことはたぶん確かですが,シーフードを食べることで摂取する程度のプラスチックに含まれる化学物質(添加剤と吸着した汚染物質)が,ただちに人体に影響を及ぼすことはないと専門家は見解を示しています(FAO 2017,Barbosa et al. 2018).

添加剤の影響は?

マイクロプラスチックは魚介類の内臓に入ってるから,内臓を食べなければ問題ないと思っていませんか?

多くの研究者が指摘する問題は,プラスチックの製造時に添加された化学物質(添加剤)です.

プラスチック由来の添加剤が魚介類の脂肪の中に溶け込んでいる可能性もあります.

プラスチックそのものは安定した材質であることが多いのですが,添加剤の中には環境ホルモン(内分泌かく乱物質)として作用する物質が含まれています.

たとえば,電化製品に使われるプラスチックの多くには,プラスチックが簡単に燃えないように難燃剤が使われます.よく使われるのは臭素系の難燃剤(PBDEs)ですが,甲状腺かく乱作用や神経毒性があります(Oehlmann et al. 2009, Halden et al. 2010, Lithner et al. 2011).

合成革皮(ソフトレザー)や,おもちゃ・浮き輪などには軟質のポリ塩化ビニル(塩ビ)が使われます.

このやわらかい塩ビには大量のフタル酸エステルが使用され,これが溶出すると考えられています(Patrick 2005, Lithner et al. 2012).

フタル酸エステルは女性ホルモン・エストロゲンに似た症状を呈する内分泌攪乱物質として知られ,乳がんのリスクを高める可能性があります(López-Carrillo et al. 2010).

これらはプラスチックに使われる添加剤のほんの一例に過ぎません.

魚介類がプラスチック由来の添加剤を体に取り込んだ場合,それらは動物の脂肪組織に移行・蓄積していきます.

そのような魚介類の体の中には,マイクロプラスチック粒は(糞として排出されて)残っていないかも知れませんが,プラスチック由来の化学物質が脂肪の中に溶け込んでいる可能性もあります.

それを私たちが食べると人体でさらに濃縮(生物濃縮)される可能性もあります.

しかし,まだどの程度なのか研究が進んでいないためほとんどよく分かっていません.

マイクロよりむしろナノプラスチック?

もっと心配なのはマイクロプラスチックよりもむしろナノプラスチックです.

ナノプラスチックとは,大きさが1マイクロメートルよりも小さなプラスチックの破片です.

マイクロプラスチックはやがてさらに微細なナノプラスチックになっていくと考えられています(Lehner et al. 2017).

さらにナノプラスチックは小さすぎて,現在の技術では海にどのくらいあるのか調べることは容易ではありません.

数十マイクロメートル程度までのサイズの小さなマイクロプラスチックなら,海水をフィルターにろ過して赤外分光顕微鏡やラマン分光顕微鏡を使って調べることが出来ます.

これがナノサイズとなると,小さすぎてそれがプラスチックなのか違うのか分析機器で見極めることは相当困難です.

なぜナノプラスチックが懸念されているかと言うと,食物連鎖を通して容易に人間に渡ってくる可能性があるからです(Mattsson et al. 2017).

マイクロプラスチックとは異なりナノプラスチックは消化器系を抜け出して免疫系や脳などの生体組織内に入り込む可能性があります.

なので今後もナノプラスチックからは目が離せません.

現段階では問題ないと思われているけど…

1つ忘れてはいけないことがあります.

これから数年〜数十年の間にもマイクロプラスチックやナノプラスチックの量は増大することが予想されています.

2060年には日本近海のマイクロプラスチック濃度が海洋生物に害を及ぼすレベルに達すると指摘する研究もあります.

将来的には,私たちの食べるシーフードから摂取してしまうプラスチック由来の化学物質の量が,健康に害を及ぼすレベルにまで増えてしまう可能性を潜在的に秘めているわけです.