2050年にプラスチックが魚の量を超えます

食塩にもマイクロプラスチックが混入ー世界中の塩から検出

塩を手のひらにのせている様子

私たちが普段食べている海塩にもプラスチックごみが混じっているとうショッキングなニュースが相次いでいます。

これまでに世界中の70ブランドの食塩が調査されました。

PETやポリエチレン、ナイロンなど混入するマイクロプラスチックの材質は様々です。 私たちの食べるシーフード、たとえば魚や貝などの海産物にマイクロプラスチックが混入していることが分かってきています。

たとえば、ヨーロッパで一番貝をよく食べるベルギーでは、年間に一人あたりおよそ1万1千個のマイクロプラスチックを食べるだろうと計算されています(Van Cauwenberghe & Janssen 2014)。

最近はシーフード以外からもプラスチックの微粒子の混入の報告が相次いでいます。たとえば、ビール(Liebezeit & Liebezeit 2014)やハチミツ(Liebezeit & Liebezeit 2013)、水道水(The Gardian, Sep 5 2017)からも主に化学繊維(合成繊維)に由来するマイクロプラスチックが検出されています。

塩田の様子

スペインの塩田 Photo: Jill /Blue Moonbeam Studio/Flickr (CC BY-NC-ND 2.0)

海塩にプラスチックの破片

プラスチック汚染は、私たちが調味料として使う海塩にも及んでいます。

塩は、人間の生存になくてはならない空気と水の次に大事なものです。

ナトリウムは、人体のホメオスタシスを維持するために必須な元素であり、私たちはそのほとんどを食塩から得ています(つまり塩化ナトリウム、NaCl)(Brown et al. 2009)。

食塩は主に、海水の蒸発による結晶化や、日光の熱と風の作用で生じる結晶化(にがり)によって作られます(Serrano et al. 2011)。

この海水が結晶化する過程で、海水に含まれていた汚染物質も一緒に閉じ込められてしまうのです(Serrano et al. 2011)。

食塩にマイクロプラスチック片が含まれているのがはじめて見つかったのは中国です(Yang et al. 2015)。

1kgの海水塩には最大で681個のマイクロプラスチックが見つかりました。次に、マレーシア、フランス、イギリスの研究チームが海塩に混入するマイクロプラスチックについて発表しました(Karami et al. 2017)。

分析対象となったのは、世界8カ国から生産される17種類のブランドの海塩です(Karami et al. 2017)。8カ国には、オーストラリア、フランス、イラン、日本、マレーシア、ニュージーランド、ポルトガル、南アフリカが含まれます。

様々な塩

海水塩 Photo: Susie Wyshak/Flickr (CC BY-NC-ND 2.0)

17ブランド中16ブランドの塩からマイクロプラスチック

研究チームは、各ブランド(銘柄)の塩、1kgを水に溶かして、目の細かいフィルター(目合い149マイクロ㍍)にろ過しました。

その結果、16ブランドから、全部で72個のプラスチックらしいものがでてきました。

そのうち40個は確実にマイクロプラスチックであることがラマン顕微鏡による分析で分かりました(Karami et al. 2017)。

マイクロプラスチックは、フランスの1つのブランドを除いて、1個から10個見つかりました。

一番多かったのはポルトガルのあるブランドの塩です。

見つかったマイクロプラスチックの大きさは、平均して515マイクロ㍍で(1mmの半分ほど)、最も小さなものは160マイクロ㍍でした。

マイクロプラスチックの64%はプラスチックの破片で、残りの26%が繊維状のプラスチック(マイクロプラスチックファイバー)、そして11%がフィルム状のプラスチックです(Karami et al. 2017)。

塩からでてきたマイクロプラスチック

食塩から見つかったマイクロプラスチックの例。(a)ポリイソプレン/ポリスチレン、(b) ポリエチレン、(c)青い塗料に使うフタロシアニン、(d)アクリルアミド(ナイロン)。Source: Karami et al. (2017) Sci Rep 7: 46173 (CC BY 4.0).

見つかるプラスチックの材質は様々

主なプラスチックの材質は、ポリプロピレン(40%)とポリエチレン(33%)で、さらにペットボトルに使うPET(ポリエチレンテレフタレート)やポリイソプレン/ポリスチレン、ポリアクリロニトリルやポリアミドなどの繊維状プラスチックもでてきました(Karami et al. 2017)。

続いて、スペインの研究チームが、21ブランドのスペイン産の食卓塩(海塩と岩塩)から、1kgあたり50-280個のマイクロプラスチックを検出したと発表しました(Iñiguez et al. 2017)。

上記の報告の後、韓国の仁川大学と環境保護団体グリーンピース東アジアの研究者グループが、世界中の39品目の市販の食塩(海塩、岩塩、湖塩)のうち、36品目からマイクロプラスチックが検出されたことが報告(Ji-Su KIm et al. 2018)。

結果は先のマレーシアらの報告やスペインの報告よりも深刻で、最大で1kgあたり1674個のプラスチックの微粒子が確認されました(Ji-Su KIm et al. 2018)。

この世界規模の調査で使用された食塩は、欧州、北米、南米、アフリカ、アジアの21カ国で販売されているもので、特にアジア産の塩のサンプルからプラスチックの混入が多く見られました。

食塩のマイクロプラスチック汚染に地理的な違いがあることを示唆しています。

中でもマイクロプラスチックが最も多く含まれていたのはインドネシアの食塩。東南アジアはプラスチック汚染のホットスポットの1つとして知られていますが、中でもインドネシアは、海洋へのプラスチックごみの排出量が中国に次いで世界で2番目に高い国であることが知られています。

海塩に含まれるマイクロプラスチックの量と、それが採取された海のプラスチック汚染度には非常に高い相関関係があるという非常に興味深い結果が得られており、海塩の汚染レベルを調べれば、その地域のプラスチック汚染を知る指標になるかもしれません(Ji-Su KIm et al. 2018)。

なお、塩の種類別で見ると、マイクロプラスチックの含有レベルが最も高いのが海塩で、続いて湖塩、岩塩でした(Ji-Su KIm et al. 2018)。

韓国とグリーンピースの研究チームは、調べた39種類の塩のうち、マイクロプラスチックが検出されなかったのは台湾(海塩)、中国(岩塩)、フランス(海塩)の3品目であったと述べています。

フランスから近いヨーロッパ諸国ではマイクロプラスチックが見つかっていますし、台湾に近い中国の海塩や、日本でも見つかっていることを考えれば、マイクロプラスチックは食塩に普遍的に存在していると言えそうです(Iñiguez et al. 2017Karami et al. 2017Ji-Su KIm et al. 2018)。

塩からでてきたマイクロプラスチック

食塩から見つかるマイクロプラスチック(主に合成繊維)。隠し味にもならない。 Source: Iñiguez et al. (2017) Sci Rep 7:8620 (CC BY 4.0)

プラを含む海塩は人の健康に影響するか?

マイクロプラスチックはサイズが5mm以下が定義ですが、塩に含有するマイクロプラスチックは非常に小さく肉眼で見分けるのはかなり困難です。

また食塩と同じ色をしたマイクロプラスチックもあるため、気づかずに食べている可能性は十分にあります。

先のマレーシアらの研究グループによると、食塩を食べることで、おそらく一人あたりに年間で最大37個のマイクロプラスチックを摂取してしまうことになるそうですが(Karami et al. 2017)、韓国らの調査では、成人が食塩から摂取するマイクロプラスチックの平均的な量は、年間で約2,000個ほどと推定しており、かなり値が異なります。

この違いは、地域差なのか、手法の違いなのかは定かではありませんが、両者の手法は異なります。

例えば、マレーシアらの研究グループ、目合いが149マイクロ㍍のフィルターに引っかかる大きさのプラスチック粒子だけをみており、このフィルターを通過してしまうもっと小さなプラスチックの粒子については見ていません。

一方、韓国らの研究グループは、目合いが2.7マイクロ㍍のフィルターに引っかかる大きさのプラスチック粒子を見ており、かなり小さなものまで数えています。

マイクロプラスチックを含む海塩を食べても人体に問題はないのでしょうか?実のところ、答えは出ていません。

マレーシアらの研究チームは、塩から摂取するマイクロプラスチックの量は少ないため健康に問題はないだろう述べています。

ただ、私たちは海塩からだけではなく、様々な食物や飲料水、空気の吸入からマイクロプラスチックを摂取しており(マイクロプラスチック、とくに合成繊維はどこにでもあります!)、塩を食べたからと言ってそれがすぐに問題になることはおそらくないでしょう。

しかし、人体への影響はマイクロプラスチックの汚染レベル(含まれる有害な化学物質の量)によって異ります。

食塩に含まれるマイクロプラスチックの種類は多岐にわたり、プラスチック片や合成繊維、マイクロビーズのように形状も異なれば、ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)のように材質も異なります。

プラスチックの種類や材質によって含有する化学物質の種類や量も異なり、その影響を調べることは容易なことではなりません。今後の厳密な調査が望まれています。

1つ(おそらく)確かなことは、このままのペースでプラスチックの大量生産と大量消費、そして管理が徹底されていない廃棄物処理を許してしまえば、海中のマイクロプラスチックの量は今後ますます増え、海塩に含有するマイクロプラスチックの量も増えると言うことです。

気づいたときには人体や海の健康に深刻な被害があったでは遅いため、包括的な環境リスク評価が急がれています。