海洋ごみの脅威

海のプラスチックごみは化学物質のカクテル

プラスチックごみから溶出する有害物質

プラスチックの生産は1950年の150万トンから2015年には3億2200万トンにまで増えています(Thompson et al. 2009, PlasticEurope).このうち,およそ半分がごみとなっており(2012年の時点),一部は海に漏れ出しています(Rochman et al. 2013).

海洋生物によるプラスチックごみの誤食(誤飲)や,プラスチックごみによる絡まりは,ここ数十年の間によく調べられてきました(Kühn et al. 2015).しかし近年,プラスチックごみにまつわる有害な化学物質について懸念が広がっています(Rochman 2015).

海のプラスチックごみには,製造時に添加された化学物質や,その分解産物,さらに海水中から取り込んだ様々な化学物質を含んでおり,さながら『化学物質のカクテル』と言われます(Rochman 2015).

人体に有害な添加剤

プラスチックを製造する過程で,いろいろな機能を付け加えるために『添加剤』が加えられます.添加剤には,安定剤,可塑剤(かそざい:やわらかくするために使う),難燃剤,帯電防止剤,紫外線吸収剤など様々な種類があります.

これらの添加剤は,その分解産物もあわせて,人体に有害な物質が多く含まれています(Rochman 2015).たとえば添加剤の一部は,人間にとって内分泌攪乱物質(環境ホルモン)として作用します(Talsnesse et al. 2009).いくつか例をあげましょう.

ポリカーボネートを作るときに使われるビスフェノールA(BPA)や可塑剤として使われるフタル酸系の添加剤は,低濃度でも発がん性や生殖機能を損なわせる内分泌攪乱作用が動物実験で確かめられています(Crain et al. 2007, Oehlmann et al. 2009, Halden et al. 2010, Meeker et al. 2009, vom Saal et al. 2007, Hauser & Calafat 2005).

火災予防としてプラスチックが燃えにくくするために添加剤として難燃剤が加えられます.難燃剤につかわれるPBDEs(ポリ臭化ジフェニルエーテル)は,甲状腺攪乱作用や神経毒性があり,有害な残留性有機汚染物質(POPs)の1つとしてよく知られています(Oehlmann et al. 2009, Halden et al. 2010, Lithner et al. 2011).

また合成革や塩ビパイプなどに使われるポリ塩化ビニルには,可塑剤としてフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)やフタル酸ジイソノニル(DINP)がよく使われます.これらフタル酸系の添加剤は,ミジンコを使った実験で急性毒性があることが確認されています(Lithner et al. 2012).

動物に取り込まれる添加剤

このような危険な物質を含む添加剤は,水中でプラスチックから溶出します.しかし添加剤の疎水性(そすいせい)がとても高い場合には,海を漂流している間にも溶出しきらずに,プラスチックに留まったまま,海のあらゆる所に拡散します(Crain et al. 2007, Lithner et al. 2012, Yamashita et al. 2016).

そのため海洋生物が,プラスチックを餌と間違えて食べた際に,これらの有害な添加剤が体に取り込まれてしまいます(Rochman 2015).

危険な化学物質を含むプラスチックを動物が食べ,食物連鎖を通して生物濃縮されるのはありえるシナリオです.しかし添加剤が食物網の上位にいる動物や人間に影響を及ぼしているかどうかは,まだ研究例が少なく,よく分かっていません.

さらにプラスチックごみは,化学物質のカクテルとも言われるように,何種類もの化学物質が含まれています.複数の化学物質が組み合わさってさらに悪い影響を及ぼしている可能性もあり,研究が急がれています(Rochman 2015).

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