2050年にプラスチックが魚の量を超えます

プラスチックごみが増えると海水浴中に病原菌に感染?

バクテリア(大腸菌)

陸上にいる生物が広い海を渡ろうと思ったら,鳥でもない限り筏(いかだ)のようなものを見つける必要があります.

海の上を浮いている天然の筏は漂流する植物(海藻など),流木,軽石のようなものだけでした(Ingólfsson 2000, Van Duzer 2004, Minchinton 2006, Bryan et al. 2012).

例えば,は虫類の卵が生み付けられた流木は大陸から別の大陸へ移動することがあります.

でもプラスチックごみが普遍的に見られるようになってからは,プラスチックが筏としての役割を担うようになります(Jokiel 1990, Gregory 2009).

プラスチックが生物を長距離運ぶ

海面に浮かぶマイクロプラスチック

多様な生物がすでに漂流するプラスチックを住処としており,長い時間を漂流して新しい生息地にたどり着いています(Barnes 2002, Gregory 2009).

プラスチックは軽くて丈夫です.

海水よりも比重の軽いプラスチックは,流木のような天然の筏に比べて長い時間浮き続けることが出来ます.

また基本的に微生物には分解されないためなくなりません.

そのため,小さな島のように,多種多様な生物を支える独自の生息地を作り出しています(Harrison et al. 2011, Zettler et al. 2013).

このようなプラスチックにまつわる独自の生態系をプラスチック生命圏(plastisphere)と呼びます(Zettler et al. 2013).

害のある微生物を輸送?

海を漂流するプラスチックは,招かざる客である外来種や侵入種の広がりも促進します(Jokiel 1990, Minchinton 2006, Bryan et al. 2012).

そこには害のある微生物や病原菌も含まれます(Keswani et al. 2016).

したがってプラスチックごみは,有害な微生物を長距離輸送しその生息域を拡大する原因になるのではないかと懸念されています(Keswani et al. 2016).

微生物は,人工また天然の物体に付着しバイオフィルムを形成します.

例えば,ポリエチレン(PE)やポリエチレンテレフタレート(PET)のようなプラスチックを海水に入れると,その表面にはすぐに微生物が増殖してバイオフィルムが形成されます(Webb et al. 2009, Lobelle & Cunliffe 2011).

バクテリアマット

バイオフィルム Photo: AJ Cann/Flickr (CC BY-NC 2.0)

バイオフィルムとは、微生物が細胞から分泌する糖タンパク質などの有機物で(Flemming et al. 2007),これのお陰で様々な物体の表面に留まることが出来ます(O’Toole et al. 2000).

バイオフィルム上の微生物は,周辺の海水中にいる微生物よりも長く生存することが研究でわかっています.

マイクロプラスチックから見つかる菌種

ヨーロッパの沿岸で行われた研究では,マイクロプラスチックから150の異なる菌種が見つかり,そこには大腸菌やシュードモナス・アンギリセプチカ(Pseudomonas anguilliseptica)などの病気を引き起こす細菌も含まれていました(Van Der Meulen et al. 2014).

また川から見つかるマイクロプラスチックには,天然物質の表面で増殖する細菌とは組成が異なる群集が見つかっており,マイクロプラスチックが下流や海に流れ込むときに,これらの異なる細菌群集の運び手になるのではないかと言われています(McCormick et al. 2014).

バクテリア

Image: AJ Cann/Flickr (CC BY-SA 2.0)

増大するマイクロプラスチックが病原菌の運び手となって,海水浴を楽しむ人が病原菌に接触する機会を増やしてしまう可能性が指摘されています(Keswani et al. 2016).

ただし,実際に問題になるほど病原菌を増やし,そして運んでいるかは分かっておらず,さらなる研究が必要とされています(Caruso 2015).