2050年にプラスチックが魚の量を超えます

海洋プラスチックごみの総量ってどれくらい?

海に浮かぶペットボトル

製造されたプラスチック:83億トン

今日までに大量生産された全てのプラスチック量を推定した調査によれば,現在までにおよそ83億トンにのぼるプラスチックが製造されたとされています(Geyer et al. 2017).

しかしながら,大部分がごみとなり,2015年までにおよそ63億トンのプラスチックが廃棄物となりました.

そのうちリサイクルされたのはたったの9%で,12%は焼却処分されましたが,残りの79%のプラスチックごみは埋め立て処理されたか自然環境へと廃棄されました(Geyer et al. 2017).

この自然環境に海が含まれます. 2010年の間だけでも480万トンから1270万トンもの廃プラスチックが,世界192カ国の沿岸国から海に入り込んでしまったと推定されています(Jambeck et al. 2015).

別の推定では,毎年およそ1230万トンのプラスチックごみが海に流入しているとしています(Eunomia 2016).

そのうち80%以上が陸上由来の廃棄物です.

これらの大半がプラスチックボトルやプラスチック容器・包装で占められています(Eunomia 2016).

残りの20%の海洋プラスチックごみは,主に船舶活動や漁業活動(紛失または遺棄された漁具)から放出されたごみが原因です(Eunomia 2016).

すでに海に流出したプラごみの総量は1億トン以上?

プラスチックの構造は極めて強固で安定しており,生物に分解されることはほぼありません(Andrady 1994).

やがて自然崩壊しますが,その速度は極めて遅く,海の中に入ったプラスチックが物理的に分解されるには数百年〜数千年の長い時間が必要です(Barnes et al. 2009).

1950年頃から大量生産が始まったプラスチックのうち,海に流れ込んでしまったプラスチックは,すべて今なお現存すると考えられます(UNEP & GRID-Arendal 2016).

では1950年頃から海に流れ込み,海洋に蓄積したプラスチックの量はどのくらいになるのでしょうか?

生産されたプラスチックごみが海に漏れ出す率はおよそ3%と推定されており(Jambeck et al. 2015),すると海洋に流出したプラごみの総量は,ラフに推定すると2億5000万トンになります(83億トンの3%).

3%の根拠は以下の通りです. 2010年に海に流出したとされるプラスチックの重量は470万トン〜1270万トン(中間値800万トン)でしたが(Jambeck et al. 2015),同年に世界で生産されたプラスチックの総重量は2億6500万トンです(日本プラスチック工業連盟).

470万トン〜1270万トンを2億6500万トンで割ると1.8%〜4.8%になります(470万÷2億6500万×100=1.8%).中間値は800万トンでしたから,800万÷2億6500万×100=3%です(Jambeck et al. 2015).

漏れ出る率が1.8%〜4.8%と幅がありますが,控えめに漏れ出る率を1.8%としても,海に流出したプラスチックの総量は(83億トン×1.8%=)1億5000万トンになります.

消えたプラスチックの謎−行方不明のプラスチック

生産されるプラスチックのおよそ半分は、海水よりも比重が小さく海水に浮ききます.

一方,半分は海水よりも重く沈みます(PlasticEurope 2015).

たとえばレジ袋のポリエチレンは海水より比重が小さいために浮きますが,ペットボトル本体のポリエチレンテレフタレート(PET)は重いために沈みます.

海洋に流入して蓄積した全プラごみ量を控えめに1億5000万トンと仮定すると,海表面を漂う「軽い」プラスチックはその半分の7500万トンとなります.

軽いプラスチックの一部は浜辺や沿岸域にとどまりますが,6割以上は外洋に流出すると推定されています(Lebreton et al. 2012).

すると少なくとも4500万トンの軽いプラごみが外洋に運ばれ表層に浮いている計算になります.

実際には1%しかない

しかしながら、実際に観測とシミュレーションに基づく海表面のマイクロプラスチックの量は,浮いているはずの4500万トンの1%にも満たなかったのです.

これまでの調査によって全球を浮遊するプラスチックの総量は9万3000トン〜23万6000トンと推定されています(Cózar et al. 2014Eriksen et al. 2014van Sebille et al. 2015).

推定値が研究によって大きく異なるのは,データの標準化や排出量のスケールアップなどシュミレーションの方法が異なるからです.

ここでは多めに見積もって20万3000トンで計算してみましょう.

この値には、もっと大きな”マクロ”プラスチックが含まれていないので、その値およそ20万3000トン(Eriksen et al. 2014)を加えると,実際に全世界の海の表面に浮かぶプラごみの総量は約44万トンになります(23万6000トン+20万3000トン).

しかし,この値は海に浮かんでいるはずだった4500万トンの1%しか説明できていません.残りの99%以上が表層から失われたことなりますが、その行方がまだ明らかとなっていないのです(Koelmans et al. 2017).

これが消えたプラスチックの謎で,the missing plastics(行方不明のプラスチック)と言います.

99%は沈んだ?

軽いプラスチックでも,微細化して(細かくなって),生物が付着すると沈降し,また小さなマイクロプラスチックは動物プランクトンなどに摂食され糞とともに沈降します.

最近のシュミレーションではマイクロプラスチックが海洋の表面を漂うのはせいぜい3年〜数年です(Isobe et al. 2019).

そのため大部分のプラスチックは深海底に沈んだと考えられていますが(Woodall et al. 2014),深海域におけるプラごみの情報は極めて乏しく,失われたプラスチックを説明できるほど大量のプラごみはまだ深海底で見つかっていません.

これからの研究が待たれています.