「生分解性プラスチック」が地球に優しいウソホント

生分解性プラスチック

「生分解性プラスチック」という言葉を聞いたことがあると思います。捨てられても自然に分解される地球にやさしいエコなプラスチックとちまたに言われ、ここ数十年にその開発と製品化が活発に進められています(Ojeda 2013)。

生分解性プラスチックのひとつに「酸化型生分解性プラスチック」があります。酸化型の生分解性プラスチックとは、従来の石油由来のプラスチック(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET)に、酸化を促進する添加剤(プロデグラダントといいます)を加えたものです(Ammala et al. 2011)。

太陽光の紫外線や熱、酸素に曝されると、添加剤のおかげでプラスチックのポリマーの酸化反応がはやく起き、ポリマー分子の鎖が切れて小さくバラバラになっていきます(酸化分解といいます)(Ammala et al. 2011)。こうしてすばやく崩壊して小さくなったプラスチックの欠片を微生物に分解してもらおう(生物分解といいます)という発想です。

マイクロプラスチックを大量発生させる

酸化型の生分解性プラスチックの問題点は、酸化分解の過程で急速に微細化して、膨大な数のマイクロプラスチックを生み出してしまうことです(O’Brine & Thompson 2010, Toshin 2012)。

酸化型生分解性プラスチックの酸化分解スピードは速いので、あたかも大きなプラスチック製品が急速になくなってしまうような印象を与えますが、発生したマイクロプラスチックは、従来のマイクロプラスチックと何ら変わりはありません(Kubowicz & Booth 2017)。

酸化型生分解性プラスチックから発生したマイクロプラスチックは、海などの自然環境条件下では、完全に生物分解されるのにしばし数十年間〜という非常に長い時間がかかります(Kubowicz & Booth 2017)。そのため生分解性プラスチックから発生した小さな破片は、環境中に長く留まり、生態系に脅威を与え続けることになります(Roy et al. 2011)。

「生分解性」と表示することの問題点

生分解性プラスチックには、酸化型生分解性プラスチックの他に、加水分解型の生分解性プラスチックがあります。加水分解によってプラスチックのポリマーを低分子化し、小さなった破片を微生物に分解させるものです。ポリ乳酸に代表される植物バイオマスを原料とした生分解性プラスチック(グリーンプラスチック)がよく知られています。

これまでの研究によって、生分解性プラスチックが自然環境中で消えてなくなるまでの時間(無機化されるまでの時間)は、従来のプラスチックのそれよりも短いことは示唆されてはいますが、その時間は分解が始まる環境条件(温度や微生物の種類など)や製品に加えられた添加剤の種類によって大きく左右されます(Karlsson & Albertsson 1998, Karamanlioglu & Robson 2013)。

現在社会が直面している大きな課題の1つが、海の中のような自然環境下で迅速かつ完全に分解する”生分解性”プラスチックがまだないという問題です(Kubowicz & Booth 2017)。

産業用の堆肥化施設で、高温という特殊な条件の下、許容範囲の時間スケール内に完全に分解(無機化)されたプラスチックはすべて、「生分解可能(biodegradable)」や「堆肥化可能(compostable)」と名乗ることが出来ます(Kubowicz & Booth 2017)。

しかし、「生分解性」と名乗ることが許されたからといって、そのプラスチックが、実際に海などの自然環境中でも同じようにすぐに分解されて無機化されるかというとそんなことはないわけです。

しかも、「生分解性」をテストするための施設で発生するプラスチックの微細片は、たいていコントロールされた閉じた系の中で発生するので、それが環境中に漏れ出すリスクは最小限に抑えられているわけです(Kubowicz & Booth 2017)。ですからマイクロプラスチックの脅威のことなどは考えに含まれていません。

したがって、生分解性プラスチックから生じた大量のマイクロプラスチックが自然環境中でどのように分解されるかについての評価もほとんどありません(Kubowicz & Booth 2017)。

分解可能と表記されたプラスチックの袋 Photo: Doug Beckers/Flickr (CC BY-SA 2.0)

困ったことに「生分解性」という言葉は、エコで環境に優しいというイメージを植え付け、消費者や企業に大きな誤解を与えています(Kubowicz & Booth 2017)。

プラスチックが「生分解性」あるいは「堆肥化可能」などと表示されていると、消費者や企業は、あたかもどんな条件下でもプラスチックが(特殊な条件下でテストしたのと)同じように速いスピードで分解されるものだと勘違いをしてしまうのです(Kubowicz & Booth 2017)。

そのためカリフォルニア州では、プラスチック素材商品に「生分解可能」「堆肥化可能」という環境に優しい文言を記載することを、法律で原則禁止しています(Alameda County District Attorney’s Office Feb 1 2017)。

「生分解性」という文言は、それが消費者の手に渡る製品に使われる場合は、きわめて慎重にならないといけないわけです。プラスチック製品に「生分解性プラスチックを使用しています」などと表記するのはもうやめるか、「自然環境ですぐに分解することはない場合があります」と表記するなどの手を打たないとマズイことになっています。

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